ヴェーダ・プルシャ・グニャーナ・ヤグニャの奥義
G.V.スッバラオ著

(ここに掲載してある写真は、1988年10月に行われたヴェーダ・プルシャ・グ ニャーナ・ヤグニャの光景を示すものです。)

1962年以来、長年にわたって、バガヴァン・ババは、人類の物質的・霊的幸福 を促進するために、ダサラ祭期間中の七日間、ヴェーダ・プルシャ・グニャーナ・ヤグニャと呼ばれる儀式を執り行ってこられました。三年ほどの休止期間の後、この儀式 の執行が、今年(1997年)の10月にプールナチャンドラ大講堂で、再開されま した。

ヤグナの儀式

この儀式(ヤグニャ)は、神を感知する意識を確保するための手段です。この儀式は、 マントラと供物と神が司ります。ですから、この儀式を七日間行うことによって、人 は二重の幸福(シュレヤ)と、神意識(グニャーナ)を手に入れるのです。 なぜこ の儀式を七日間行わなければならないのかと尋ねる人もいるかもしれません。七とい う数字には、創造にまつわる特別な秘儀があります。たとえば、七つの世界(サプタ ・ローカ)があって、七人の賢者、七つの海、七つの聖なる山、七つの音階が存在 し、太陽の光には七つの色がある等々、と言われています。もしこれらのものを、神 の象徴として崇拝していれば、神意識が生じます。ヴェーダの教えに従って、七日の 間儀式を行うことにより、人間は、無知の七つのベールを取り除き、霊的知識の七段 階を上って、解脱(モークシャ)を得ることができます。

ヤグナの儀式

儀式を始める前に、ヴェーダの学者(パンディット)たちは、儀式を行う場所を清め るためのマントラを唱えた後、儀式を行うための誓いの言葉を、聖典に処方されたと おりに唱えます。

この儀式に参加する、オレンジ色の衣を身にまとったすべてのヴェーダ学者たちは、 マンディール(神殿)から、縁起のよいナーダスワラムの音楽と、学生たちのヴェー ダの詩篇の吟唱に合わせて、行列になって進み、プールナチャンドラ大講堂に到着し ます。

儀式は、聖なる犠牲の火を灯すことによって始まります。この火は、僧侶たちが神聖 な二本の木の棒をすばやくこすり合わせることによっておこされます。木の棒の中 に潜んでいる火が、摩擦によって自然に発火することによって、犠牲の火(護摩の 火)が燃え始めるのです。これは、宇宙の万物に神が内在していることを象徴してい ます。もし私たちが目を内に向ければ、自分のハートの中にある、神の輝きそのもの の光を体験することができると、バガヴァン・ババは幾度となく宣言してこられま した。

この儀式では、七つの主な神々に祈りが捧げられます。それは、ガネーシャ神、スーリヤ(太陽 神)、デーヴィ(母なる女神)、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァ、アグニ・シャク ティの七神です。ヴェーダを伝播する神である、四つの顔を持つブラフマー神を称え て、ヴェーダの詠唱が行われます。帰依の火の捧げ物を神々に運ぶ火の神アグニもま た、護摩の火への捧げ物によってなだめられます。全部で七つの聖なる力に対する礼 拝が行われます。バガヴァンは、これらの力はすべて人間に備わっていると宣言され ました。

ヤグナの儀式

特定の神に対する礼拝が行われる前に、礼拝に邪魔が入らないように、ヴィグネー シュワラ(ガネーシャ、ガナパティ)の助けが求められます。ガナパティは、聖なる マントラ「オーム」(原初の音)の化身である第一の神として崇められています。ガ ナパティは、知識とさまざまな力を授ける神様です。

太陽神への礼拝は、この儀式の中で重要な部分を占めています。この太陽神礼拝に携 わる僧侶は、太陽神に対して全身を使って行う礼拝(スーリヤナマスカール)を捧げ ながら太陽に関する神聖なマントラを繰り返し唱えます。太陽は健康を授ける神であ り、太陽系のすべての惑星の主神です。この礼拝は、物質的な太陽にではなく、太陽 を司るスーリヤナーラーヤナ神に捧げられます。

この儀式(ヤグニャ)のもうひとつの重要な特徴は、女神(デーヴィー)への礼拝です。 この女神は、パラメーシュワリーであり、チットスワルーピニーであり、マーヤースワルー ピニーです。この女神は、自然と、宇宙の母の象徴であり、愛の至高の化身です。女神 は、神の物質的な七つの形を表しています。儀式の中では、「ラリータ・サハッスラ ナーマ」(女神の1,008の御名)の詠唱と、「デーヴィー・バーガヴァタム」の朗読によ り、女神に礼拝が捧げられます。

ヤグナの儀式

この儀式の中では、バーガヴァタムとプルシャ・スークタムの詠唱によって、ヴィシュ ヌ神への礼拝が行われます。ヴィシュヌ神は、プルシャ・スークタムの中で、全宇宙 に遍満している宇宙の主神として賞賛されています。シュカ尊者は、パリクシット王 に、この世を去る直前の七日間にわたってヴィシュヌ神の栄光を聞くことによって、 王は解脱を得ることができると言いました。

ヴァールミーキが著した『ラーマーヤナ』の朗読は、この儀式のもうひとつの重要な 項目です。霊的な求道者にとって、毎日『ラーマーヤナ』を読むことは、素晴らしい 価値があります。このような背景の中で、スワミはスンダラカンダ(美の章)の特別 な重要性をしばしば強調していらっしゃいます。ヴァールミーキはこの章で、ラーマ の最高の帰依者ハヌマーンを称えています。

この儀式の最も重要な側面は、シヴァ神への礼拝です。この礼拝は、シヴァの1,000 のリンガにプージャー(礼拝の儀式)を捧げることと、七日間毎日、「ルッドラム」を唱えながら護摩の火に供物を捧げることによって行われます。儀式の最後の日には、バ ガヴァンがさまざまな貴重な品を物質化されて、それを護摩の火にお捧げになりま す。バガヴァンは、すべての人一人ひとりが護摩の火に捧げるべきものは、各人の悪 い性質であると宣言していらっしゃいます。スワミは、護摩壇から立ち昇る、神聖な マントラの力に満ちた聖なる煙は、空の中に入り、雲から降ってくる雨を浄化する、 と説明してくださいました。こうして、護摩の火から立ち昇る煙は大気と地上のけがれ を浄化するのです。

創造主としてのブラフマー神は、この儀式の中で、僧たちによるヴェーダの吟唱に よってなだめられます。ヴェーダは永遠であり、すべてのダルマの基盤です。バーラ タ(インド)は、ヴェーダの魂として、また、ヴェーダを世界に与えた国として高く 評価されています。バガヴァンは、多くのご講話の中で、ヴェーダの栄光を宣言して いらっしゃいます。

リグ・ヴェーダとヤジュル・ヴェーダを習得した学者たちは、儀式の中で主要な役 割を受け持っています。バガヴァンは、ヴェーダのマントラに備わる、浄化の力と犠 牲の力をしばしば強調してこられました。

儀式(ヤグニャ)の行われた七日間を通して行われたバガヴァンによる御講話は、帰依 者にとって、正真正銘の霊的な御馳走です。バガヴァンが、最もわかりやすい言葉 で、最も深遠なヴェーダの真理を説明してくださるので、不二一元論の教義や、個々 の魂と至高の神我とがひとつであることを、誰でも理解できるのです。実にこれこそ が、「霊的英知の儀式」(グニャーナ・ヤグニャ)の真の目的なのです。

ヤグナの儀式

ババは、儀式を行った僧侶全員と、衣類その他の贈り物をすることなどによって儀 式に参加したすべての人の栄誉を、惜しみなく称えられます。今年のヴェーダ・プル シャ・ヤグニャは、プラシャーンティ・ニラヤムの歴史上、最も記念すべきものの一つ となりました。

 

 
 

出典:"Sanathana Sarathi"1997年12月号
翻訳:サティア サイ出版協会