奉仕のぺージ
「セヴァ─真のボランティア」を読み、スワミの「奉仕をしなさい。人への奉仕は神への奉仕です。奉仕が最も重要な霊性修行です」という言葉に促されて、まず思いついたのは新宿で路上生活を送っている人たちへの奉仕でした。その当時、東京センターでナラヤナセヴァが行われていることを知りませんでしたので、ボランティアセンターを訪ねて資料を探し、ある民間のボランティアグループに参加することにしました。
そこでの活動は、主に軽食や入浴券、石鹸、タオルなどを持って段ボールハウスを訪問し、病気やけがで困っている人がいないか、または、何かの原因で救援が必要な人がいないかをパトロールし、孤独な人がいれば話相手になるという内容の奉仕でした。
始めた頃は、あっちこっちとそれらしい人を見かければ声をかけるといった有り様で、決して立派な奉仕とは言えませんでしたが、それでも食事にありつけずにいた人や、誰かと話をしたかった人から喜ばれ感謝をされることがあり、この活動に熱中していきました。
週に1度の活動に参加する内に、この人たちのおかれている状況が何となく理解できるようになりました。長引く不況で仕事が少ない上に、50歳を過ぎるとなかなか雇ってもらえなかったり、長年の路上生活で体力が低下し、慢性病に悩まされている人がかなりいるなど、簡単には解決しない問題をそれぞれが抱えているのです。
事情が分かるにつれ、この人たちが然るべき行政施設に保護されるか、地域社会や奉仕団体等の支援を受けて社会復帰ができるようになることが、そのころの私にとっての願望となりました。この民間奉仕グループのこういった地道な活動でも、それが積み重なれば、この人たちに前向きな気持ちが起こり、ひとりふたりと社会復帰してくれるのではないかと淡い期待を抱いておりました。
そんなことを信じて、来る日も来る日も食料を届けたり、話し相手になったりしていましたが、ほんのわずかな例を除いて、思ったような変化はほとんど感じられませんでした。そのうちに自分のしている事が砂漠に水を撤くがごとく、むなしくはかない事のように思えてきました。もっと早く解決する即効的な手段はないだろうか、大量雇用が発生する企画はないかとか、あれやこれや考えておりましたが、考えれば考えるほどシステムの問題ではなく、心の問題ではないかと思うようになりました。それならどうしたらこの人たちの心をポジティブな状態に変えることができるのだろうか、解決の糸口を見つけたくて、対話の中からあの手この手で探りましたが、さっぱり答えが見つかりませんでした。
そういう状態が続き、悶々としていたのですが、東京センターが新宿でナラヤナセヴァをしているのをその時はもうすでに知っておりましたので参加してみました。
お弁当を配るだけで終わってしまうので、最初は何か物足りないような気がしましたが、スワミのなさることだからきっと何か深い意味があり、民間のグループに参加している時には解らなかったことが解るようになるのではないかと考え、また勉強し直すことにしました。
センターのセヴァは神に捧げる、礼拝としての奉仕であるということで、まず神に祈りを捧げた神聖な食事を配ります。この食事に祈りを込めることで、神にこの人たちの心の変容をお願いするということであります。となると私たちはただそれを運ぶだけということになります。たったこれだけの事といったらお叱りを受けるかも知れませんが、これでどういうことが起きるのか興味津々でした。
しばらくセヴァに参加する内にまもなく変化が起こって参りました。それは、なんと私自身に起きたのです。変わらなくてはならないのはこの人たちよりも、まず私自身の心だということに気づかされたのです。
いつもと少し違う気持ちで奉仕に出かけたある日。離れたところで一人ぽつんと座り込んで遠くの方を呆然と眺めている若い人がいました。その様子から相当気落ちしているのが分かりました。近づいて弁当を食べますかと聞くとしばらく不安そうな戸惑いの顔をこちらに向けた後、黙ってコクとうなづきました。
それ以上何も話しかけられなかったので、弁当をわたしてから少し離れたところで様子をうかがっていました。
その食べている様子が、もう何日も食事にありついていないことを物語っていました。それを見ている私の胸の中が、言葉にならない思いで充満しているのです。そして、それだけで満足している自分の心がありました。人への奉仕が私の心を変えてくれたと思いました。弁当を運ぶ、たったそれだけの行為が実に大事なことであるということを教わった出来事でした。そう思えるようになってからはセヴァが楽しくありがたいものに思えるようになりました。スワミは「愛をふんだんにふりまきなさい」といわれますが、セヴァをしてその人から喜びを受取り、満たされた心で帰ってくるのは私の方となったのです。奉仕の根本を教えて下さったスワミに感謝致します。
(東京センター)
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